席上、元内閣総理大臣の村山富市氏から送られた祝辞が披露され、「今年は戦後70周年であり、日中関係にとって大変重要な一年である。日中関係は現在、さまざまな困難に直面しているが、日中間の4つの政治文書の精神に基づき、双方の出版界が相互交流を進めること、また相互理解を深めるために有益な書物を世に出すことは、新たな日中関係構築のためにも非常に重要だ。皆様が今回の交流会を機に、日本と中国の出版交流と相互理解の促進、ひいては日中の平和と友好のために、益々ご活躍されるよう期待する」などとする内容が読み上げられた。
次いで李局長があいさつし、「中国は、紙の製造・印刷技術の世界発祥の国。現在国内では毎年40万種余りの書籍、1900(種)余りの新聞、そして9000(種)余りの定期刊行物が出版されている。書籍の年間出版数、日刊新聞の発行部数は世界一、電子出版物の総数は世界第二だ」と新聞、雑誌、書籍の巨大マーケットが存在するという中国の最新メディア事情を紹介。
その上で、こうした「日中両国における出版の交流と協力を強化することは、両国民の相互理解と互いの信頼を強化することにつながる」と強調した。
来賓のあいさつに続き、宮本雄二・元中国大使(日中関係学会会長)が「当面の日中情勢と出版界の役割」と題して基調講演。
「日中間はこの2~3年、難しい関係に陥ったが、両国には日中友好の道しか選択肢はない。日中首脳は昨年11月以降、トップ会談などを通じて関係改善を確認しており、これを外交努力や経済文化交流などでいかに実現するかが重要だ」とした上で、両国関係改善に向けた出版界の役割については「(相互理解を深めるためにも)良書を積極的に翻訳し、両国で出版することが重要だ。中国の日本研究者はいまだに70年前の『菊と刀』を読んでいる。それを超えるいい本が出ることを期待している」などと呼びかけた。
このあと、日中の出版関係者やマスコミ関係者らがパネルディスカッションを行い、中国側からは「読者受けする本だけでなく、双方の理解を深める本を積極的に相手国で出版すべきだ」、また日本側からは「出版社が書籍や雑誌を通じて、事実を正確に国民に伝えることが重要だ」などの前向きな意見が出された。
交流会ではこのほか、日本僑報社の段躍中編集長が「読書で日中相互理解を深めよう」とする呼びかけ文を発表した。
日中大手マスコミの報道――
第4回日中出版界友好交流会
日本僑報社などが主催した第4回「日中出版界友好交流会」は、日中の出版界をはじめ大手マスコミの関心も高く、NHKテレビ、「朝日新聞」「人民日報」など各社が取材、それぞれ大きく報道した。
その中で、NHKは「日中の出版界が相互理解考える催し 東京」と題して即日報道。宮本雄二・元中国大使が基調講演で「出版界は国民が相手の国に敬意を持てるような材料を提供してほしい」と述べたことなどを伝えた。
また朝日新聞は「『日中の良い面を伝える本を』 関係改善へ両国の出版関係者が議論」と題した7月3日付の記事で、「互いの良い面も伝え、尊重する気持ちになれる書籍を出版しなければならない」などと交流会で話し合われた内容を報道した。